阿漕(あこぎ)

ストーリー

伊勢の阿漕が浦に立ち寄った旅人(ワキ)と、この地の老いた漁夫(前シテ)は互いに古歌を詠み交わし、旅人はこの浦の名の由来を尋ねます。老人は、昔から禁漁の所とされていたにも拘らず、密漁を重ねていた阿漕という名の男が捕らえられ、沖に沈められたことを語り、姿を消します。旅人は老人が阿漕の霊であると直感しました。旅人が阿漕のため回向をしているところへ、果たして昔の姿で阿漕の霊が現れます。死後も密漁の罪で地獄の責苦を負っていることを嘆き、救いを求めるのでした。

解 説

この曲は三卑賎物(他の二番は善知鳥、鵜飼)のひとつです。

シテは伊勢神宮へのお備えのために禁漁なのに夜な夜な忍び入り魚を採る『あこぎな人』です。この言葉はこの曲が語源になっているとかいないとか。

シテは地獄の責めを受け、助けを求めますが、それも空しく、成仏することなくまた海底に沈んでいってしまいます。禁猟区での密漁、殺生という二重の罪の制裁は、最後まで救いようの無いテーマで、凄惨極まりない曲です。

特殊な型も多く、前半中入り前の「繰り返し繰り返し」のところで釣竿に糸を絡める所作、後半の密漁の様を見せるところが見所であり、至難な業です。「なお執心の網置かん」と忍び入り網を置き、太鼓のテーンという音にビクッと驚きあたりを見回し人のいない事を確認して魚を網におびき寄せその網を上げる型をします。演者の『技』をご覧ください。

 

曲*いろいろ へ