巴(ともえ)

ストーリー

木曽の僧が都へ上る途中近江国(滋賀県)粟津に着き休んでいると一人の女が現れ、木曽義仲を祀る社で涙を流しています。僧は神に参っているのに泣くことを不審に思い尋ねると、女は義仲の霊を慰めてくれるよう僧に頼みます。その上自分も今は亡き身であることを明かして草陰に姿を消してしまいます。(中入り)所の者に義仲の最後や巴御前の事を聞き、その夜弔いをしていると、長刀を持ち武装した巴御前が現れ、義仲の最後を語り、義仲の遺言により一緒に死ぬことを許されず自害した義仲の枕元から小袖と小太刀の形見を持って涙ながらに木曽へ落ちのびたことを述べ、僧に回向を頼み消え失せます。

解 説

この能は修羅物の中で唯一女武者を主人公とした曲です。自分が死んだ場所ではなく愛する男の死んだ場所での回顧というのが修羅物の中でも他と違った幽玄性が強調されているように思います。また、そのように可憐な美女が長刀を持ち奮戦するという作者の脚色の上手さが人気の秘密でしょう。(実際はかなりの男勝りで長刀は持ってなかったらしいですが・・・)観世流では前シテは里女となっていますが他流では社に仕える巫女らしいです。義仲を題材にした曲には「木曽」「兼平」があります。平家を都落ちさせた英雄「義仲」。しかしその功労者なのに頼朝より追放されてしまうという可哀想な運命の人なので、なおさら情緒が増すのかもしれませんね。

小書「替装束」では形見を持った後、甲冑を脱いで水衣に替えて笠を持ったりして落ちゆく姿に哀れさを強調させたりします。

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